2008年11月10日月曜日

ノーベル物理学賞の小林誠先生による講演「対称性の破れとは」

c42ea5df.jpg11月9日、ノーベル物理学賞を受賞した小林誠名誉教授の講演が、高エネルギー加速器研究機構のある地元つくばで開催されました。対象はつくば市の小中学生です(事前申込みが必要)。


当日券70枚分だけ保護者も入場でき、また、入れなかった方もホールに設置されたモニターで講演の様子を見ることができました。残念ながら私はマンションの理事会があったため、途中からしか聞くことができませんでした(代わりに娘が、小5の息子をタクシーで会場まで送ってくれました)。


引く手あまたにもかかわらず、真っ先につくば市で講演会を開いてくださったのは嬉しい限りです。肝心の理論はかなり高度で、かみ砕いて説明してくださったのですが、小学生にはちと難し過ぎたようです。息子は「(研究が)大変なのは分かった」との感想でした。


最後に質疑応答の時間があって、小中学生たちからの様々な質問に答えてらっしゃいました。

以下、アバウトですがその内容です。

  1. クォークは一番小さい物質なのか?

    今分かってる中では一番小さいが、それ以上は分からない。

  2. 中学生のときに好きだった教科は?

    中学のときどうだったかはよく覚えていないが、高校ではテニスばかりしていた。勉強はあまり好きではなかった。

  3. 勉強しているときに葛藤はなかったか?

    パラドックスみたいなものがあり、それをずっと考え続けている。いつも考えを心の隅に持っていて、時間があったら考えるようにしている。これは考え方のトレーニングにもなる。分からないからといって諦めるのではなく、考え続けるのがよろしいのではないか。

  4. 研究に行き詰まったとき、どのように解決しているか?

    うまくいく方が珍しい。たいていは困難にぶつかっている。いつもどこかにたくさんの問題意識を持っている。持ち続けていると何かのきっかけで解決する場合がある。それが私のスタイルで、どこかでぶつかったからといって、悩んでしまうことはない。

  5. どうして物理学に興味を持ったのか、それはいつからか?

    いつからかは分からない。原理的なことや物理に関心があった。本を読んだりするうちに、勉強したいと思った。

  6. 子供の頃、どういう職業につきたいと思ったか?

    学生の頃は研究者になりたいと思ったが、その前は覚えていない。あまり先のことを考えなかったような気がする。

  7. 何故クォークが6つあると思ったか?

    粒子と反粒子の違いを理論的に説明したいと思った。クォークの数が少ないと違いがうまく説明できない。それ以外にもいろいろ考えたが、あまり少ないとうまくいかないので、だんだん増やしていった。6個か自然だと考えた。

  8. スーパーカミオカンデはT2K実験を考えて造られたのか?

    スーパーでない方のカミオカンデは宇宙から降ってくる粒子を計る目的で造られた。スーパーカミオカンデもT2K実験のためだけに造られたのではない。



素朴な疑問や、鋭い質問が次々と飛び出してきます。それに対し、考えながら真剣に答える小林先生の姿が印象的でした。


私は、次の言葉が心に残りました。

分からないからといって諦めるのではなく、考え続けるのがよろしい


子供達にとって、この講演が「特別な体験」になるといいですよね。

そして、私自身にとっても。


47NEWS 2008/11/09
ノーベル賞の小林さんが講演 「考え続けるのが楽しい」

3 件のコメント:

  1. オレンジネオ2008年11月13日 20:35

    宇宙の始まりや物質の根源って興味は有るのですが、理解は難しい(レベル的に不可能かな)。ビックバンの超高密度、高温状態からインフレーション理論で旧膨張して数十秒後に現在の原始水素やヘリウムができたんでしたのですよね。宇宙が膨張していることは赤方変異で分かっても、本当に1点からできたのか確信は持てません。分子/原始レベルはとうとう走査型電子顕微鏡で金属などは構成が見える時代になってきましたが、電子や原子核、さらにクゥオークとなる手におえません、丁度知りたいサイエンスで素粒子の話があったので読んでいたところです。さらに物質の根源は10次元のストリングや11次元の膜で作られているような理論がでていますが、そなると全く手におえません。プランク長なんて10のマイナス35乗とかの極小世界は激しい振動になっているようですが、3次元の我々の実態がそんなものから出来ているのなら何でもありかもしれません。
     それにしても筑波はレベルの高い講演をされています。子供さんには素晴らしい体験ですね。
    ノーベル賞受賞者の著作は意外におもしろいので一般向けのものを時々呼んでます。やはり基本は好奇心と執着力 いや執念かな。

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  2. 大学の時(えらい昔。トリスタンはまだ動いてなかった頃)、南部陽一郎が講演に来たので聞きに行きました。当時から凄い人気で、講堂から人が溢れていました。僕も講堂内にきちんと入れず、演台と反対側の出入り口のところで聞いてました。なんの話だったかすっかり忘れています。情けない...
    当時はあれこれ興味を持って本読んだり雑誌見たりしたたんですが、最近はもうさっぱりです。気合を入れなおさないと。
    素粒子だと、後はヒッグス粒子になるのかな。
    ともあれ、今回のつくばでの講演を聞いた子供たちが自然科学、基礎科学に興味を持ってくれたら嬉しいです。そもそも、そういう事に接することができるというのは、とっても良いことだと思います。

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  3. オレンジネオさん、みこさん、こんばんは。
    私は遅れて行ったので「対称性の破れとは」の講義はほとんど聞けなかったのですが、冊子を見る限りではかなり難しい内容でした。
    「CP対称性」とは、粒子と反粒子を取り換えても法則は不変であること。ところが、CP対称性の破れによって、宇宙の進化の過程で、物質と反物質の量に差ができた可能性がある、云々…。

    サイエンスには興味はあるのですけど、最近はとんとご無沙汰してます。むしろ、中・高校生の頃に、ブルーバックスとかから超(?)知識を得ていましたね。背伸びして難解な理論を読んでも、何となく分かった気になれるところがいいのかも。宇宙や原子などの科学分野にワクワクを感じていたものです。

    生の声を聞けるいうのは、やはり特別な体験だと思います。憧れや好奇心から入るというのもアリでしょうから。
    可能性に満ちあふれた子供達が科学に興味を持ち、先人の後を継いでさらなる発展へと導いていく。そこに明るい未来が待っているような、ハレバレとした気持ちになりました。

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