2010年10月25日月曜日

もし次女が亡くなったときに「よかったね」と言われたら…


流産した女性に日本ホメオパシー医学協会会長の由井氏が掛けた信じがたい言葉」を読んで衝撃を受けました。

由井寅子氏は著書『ホメオパシー的妊娠と出産』の中で、流産を経験した女性とのやり取りについて以下のように語ったというのです。

あるお母さんがステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)のコルチゾン(一般名:強力レスタミンコーチゾン)をとり続けていました。この方はアトピーのためにステロイド剤をずっと使っていたのです。それで、妊娠7週目で子どもが流れてしまった。当然、そのお母さんはおんおん泣きました。

でも私は、彼女に「よかったね」といったのです。「全部とは言わないけど、子どもさんがあなたのステロイドの毒を食べてくれて流れたのだろう」と。胎盤は栄養だけでなくあらゆる母体の毒を吸い上げてしまうのです。幸いに、2年後にまた子どもができました。よかったですね。


なんなんだろう、この無神経さは。

私は医学には疎いので理論の正当性云々には触れませんが、「善意」だと信じ込んでいる由井氏の言葉には心底ゾッとします。


私には次女がおりました。出産前には異常が分かりませんでした。

帝王切開の折、4本の骨が折れました。生まれつき骨が脆く四肢は硬直し、全く動きませんでした。自力でミルクも飲めず、管から胃に流し込んでいる状態でした。


それでも懸命に生きましたが、内臓も弱かったのでしょう。生後2ヶ月で息を引き取りました。それが天命だったのかもしれません。でも、流産した方がよかったなんて思えない。生きている姿をこの目で見、その体を抱いていたのですから。まるで夢のような日々でした。


出産後は何度も自分を責めました。身体に良いことばかりをしてきたわけではありませんし。二人目という油断もありました。もし、そんな心境のときにこんなことを言われたら、どう思うでしょう。考えるのも嫌ですが、ありったけの想像力を働かせてみました…。


取り返しのつかないことをしてしまったと、自分を責め続けるでしょう。「よかったね」と言われても、よかったなどと思えるわけがありません。ただ、二度とこんなことは起こすまいと誓い、藁にもすがるような気持ちで、声をかけてくれた医師や助産婦さんの言葉を受け止めるに違いありません。


病気の人、心に傷を負った人、間違いを犯してしまった人など、弱い部分のある人間は心にポッカリとすきまが空いています。そこに、つけいる隙があるのです。健康で気力が充実しているときには陥らないような単純な罠に、自ら進んで落ちていくのだと思います。


よく「自分から進んでやっているのだから放っておけばよい」という意見を聞きます。これを読む前は、実は私もそう思っていました。病は気からと言いますが、プラセボだって効果が現れるのですから、何かを信じることで少しでも良くなるなら意味が無いわけじゃないと考えていたんです。


でも、それは大きな間違いでした。

あたかも、これが正統な医学であるかのように、唯一無二の真理であるかのように喧伝し、知識の無い弱者を狙い打ちにして「盲信」へと追い込んでいく。まさに百害あって一理なしです。宗教ならばまだ許せます。それは「信仰」に根ざすものだと誰もが理解しているから。しかし、ホメオパシーは医学/医療という名を借りた「詐欺」です。


しかも、被害者がいるのです。ホメオパシーが人を救う道であると信じ従うことによって、助かる者が助からなくなり、産まれるべき命が失われているのです。自然界での生命の流れを大切にしているかのように振る舞っているけど、本当の命の重さなんて分かっちゃない。


『ホメオパシー的妊娠と出産』は無根拠な決め付けと明らかな誤り、無神経で無思慮な言葉で埋め尽くされている本だそうです。本来はきちんと熟読してからブログを書くべきでしょうけど、ごめんなさい、私は読む気にもならない。

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