2007年9月2日日曜日

『警視庁捜査一課特殊班』で分かるSITとSATの役割

ac662b22.jpgCNET読者ブログ警察におけるメディアミックスの展開シリーズでも少しだけ紹介しましたが、毛利 文彦著の『警視庁捜査一課特殊班』を読みました。古本屋で400円(定価:本体1600円、文庫版もあり)で見つけた掘り出し物です。

捜査一課特殊班とは、身代金誘拐、企業恐喝、立てこもり、ハイジャックの4つの事件を主に担当している警察刑事部の捜査一課に属する特殊班捜査係のことを指します。いずれの事件も報道で大きく報じられ、その社会的影響は計り知れません。警察のメンツに係わるような重大な事件ばかりです。これとは対照的に、特殊班そのものについては機密扱いとなっており、その本当の姿は秘密のベールに包まれています。


その刑事部の超エリートである特殊班にスポットを当て、実際に起きた事件での緊迫する場面を再現し、担当する捜査官の行動や考え方に迫ります。「小1男児誘拐事件」「グリコ・森永事件」「麻原彰晃逮捕」..その詳細な記述がすごい!

そこまで書いてしまって大丈夫なの? と一般人である私が見ても心配になります。


「第八章 特殊班の知られざる技術」では、遠隔操作でブレーキがかかる乗用車(犯人の要求に応えて逃走用に渡す)や閃光弾盗聴マイク等の道具の使い方まで、こと細かく記載されています。他の章でも随所に、使用する武器防弾チョッキ等の装備の詳しい記述が見られます。

「第九章 SITとSAT-ハイジャック事件」では、『踊る大捜査線』で一躍有名になったSATとSITのハイジャック事件における役割や、その対立姿勢までが描かれています。当時のものとは言え、現場でのオペレーションについて書くことはテロ犯に手の内を晒すことにもなりかねず..

SITとは、ズバリ捜査一課特殊班のことを表します。"Special Investigation Team"の頭文字を取ったものだとの通説がありますが実はそれは後解釈で、真相は『捜査のS』『一課のI』『特殊班のT』という略称なのだそうです。

「いかつい顔をしたデカ連中にそんな発想があるわけないでしょう」とは、当時を知る捜査一課OBの談です。


我々はどちらも似たような組織なのかと勘違いしてしまいますが、実は二つの組織はまるで異なるものです。下記に違いを簡単にまとめてみました。

SIT:刑事警察の特殊部隊、30代~50代のたたき上げの男女刑事→捜査力のSIT
SAT:警備・公安警察の特殊部隊、25歳以下の独身の男性警察官→技術と体力のSAT


著者は決して興味本位で事件を調査したわけではなく、知名度を高めるために内情を暴露したわけでもありません。その緻密で力強い文章からは「過去や現在の警察組織の矛盾や捜査の問題点を抽出して教訓を汲み取り、今後に役立てほしい」という熱い想いが感じられます。


最後に、著者の言葉から。
今の警視庁特殊班を生かすも殺すもトップたちの判断次第。現在の日本警察はそういう局面に入った。


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警視庁捜査一課特殊班 (文庫)

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